それは未知の世界だった。




虹色の笛-5-


「う、はあ・・・」
この西洋の国のような街並に、ルウは吐息をはいた。
赤レンガ造りの建物。
見たことのない食べ物の並んだ市場。
けれど、”西洋の国”だけならそこまで驚かないんだ。
問題はそこに住む”人”だった。

「・・・猫?」
猫だ。猫がいる。
人に紛れて猫が、
人間みたいに服を着て、
二足歩行で・・・。
「?ああ、”キャルト”ですよ。
彼らも人のように過ごしているんです。」
「へえ」
辺りを忙しなく見渡しているルウを、
ユウは微笑みながら眺めると、
その街の奥へと足を進めた。


「ああ、魔導師様と剣王様だ」
「こんなに近くで見れるなんて、」
「剣王さん!」
その異様な光景に、ルウは呆気に取られた。
キャルトや人々が、ユウやミツを有名人のように
口づさんでいる。
「けんおう、まどうし・・・?」
「俺らの呼び名。この街の奥に俺らは住んでるんだけどさ、
名前を明かしてないから、皆そう呼ぶんだ。」
「ガラじゃないですけどね」
この二人はこの街で本当に有名人なのだ。
そう思うと、何だか居心地が悪くなった。
自分がここにいていいのだろうか。
そんな思いが頭を廻る。
それでも行かなくてはいけないのだろうが、
何となく、二人の傍で歩くのに気がのらない。
ルウはそんなことを考えていたが、
ユウたちが足を止めたと同時に我に返った。
三人の前には大きな門が建っていた。
その門は雲に隠れるほど高く、空を見ているようだ。
「?ここに住んでるの?」
「ちげえよ。此処からこっちの世界に入んの」
ミツが軽く笑った。
「え、でも今まで歩いてきたのは?」
「あれも街だけど、こっちの世界と
あっちの世界を結ぶ空間の中心にある街なんだ」
「だから、この門を通れば、僕らの世界に入れるんです。」
まだ彼らの住む世界ではなかったのか。
そう思うと、少し気が楽になった。
「この門を潜れば此方の世界に入れますけど・・・。


行きますか?」


え?」
「ルウさん、まだ迷ってるんでしょう?」
「・・・あ・・・」
心の中を見透かされ、ルウはたじろいだ。
「来たくないのなら無理して来なくていいんです。
元の世界に戻っても、レイナがまた現れないように、
僕らがなんとかします。」
無理して来ても、キツイだけですよ。
ユウはそう言うと、そのまま何も言わなくなった。
ルウは答えに迷った。
確かに、今帰れば元の生活に戻れるし、楽だ。
でも、彼らに守られて生活して、
毎日毎日同じことを繰り返すのは気が引けた

自分の知らないところで、
自分に関わる戦いが起こるのは嫌だった。


自分で解決したかった。

だから、
「私は、」

だから私は、
「この門を潜って、この笛を守らなきゃ」
元の生活に戻るのなら、
「おう」
「・・・じゃあ、行きましょうか」
二人は少し笑むと門を見た。

それは、この先のずっと先のことで、
何も解らない。
それでも、私は先に進まなきゃいけない。
「・・・。よしっ、」


三人は門を潜り抜けた。



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さよなら